「月姫」「Fate/stay night」などを手掛ける奈須きのこさんから「絶対に越えられない壁として君臨する作品」と語られたループものの大傑作「CROSS✝CHANNEL」を、今回はご紹介させて頂きます。

この作品は何度も移植されて全年齢版も出ていますが、出来るなら18禁版をプレイして下さい。他の鬱ゲーもそうなのですが、エロシーンをカットされてしまうと、話の重みがどうしても軽減されてしまい、完全に楽しむ事が出来ないのです。

こちらも例外ではなく、エロシーンの中での描写などが話の重要なポイントを握っていまして、そこを削ってしまうと柔らかく説明はされても重みが減ってしまっています。

ですので、あなたが成人しているのであれば、18禁版の方でプレイなさる事をオススメします。主人公のキャラクター背景も関係していますので、しっかりそこも読んで下さいね。

繰り返される日常 たった8人の世界

この作品の特徴は上記にも書きましたが、ループものだという事と、世界に主人公を含めて8人しか存在していない、という事です。

プレイ開始当初はプレイヤーは何の説明もなく何も分からないまま進みます。とりあえず分かるのは、主人公が入部している放送部の仲間達に何かがあってバラバラになってしまっている、というくらいでしょうか。

屋上では部長の先輩(ヒロインの内の1人)が一人でラジオ放送用のアンテナを組み立てていて、他のメンバーは姿すら現さなかったり、仲良し2人組でずっと一緒に居たり、教室で1人でぼーっとしていたりで見事に全員バラバラになっています。

各登場人物達と話をしても「???」みたいな状態になると思います。まぁ1周目ではほとんど分からないままとりあえず終わるので、そこまでは日常を楽しんで下さい、ここでダレてはこの作品のいい所が見れませんよ。

終わる事のない1週間

で、どうやら彼らは同じ1週間をずっと繰り返しているようです。最後の日が来ると巻き戻され、それぞれの記憶もリセットされてしまうので、誰もその自覚がありません。

なぜこんな事になってしまっているのか、それはまだこの段階では分かりません。とにかく同じ1週間を繰り返しているので、食べ物は尽きませんし、主人公が見た世界には前の周と同じ光景がちょこちょこ写ります。

そして、この世界には彼ら8人しか存在しない、という事が分かってきます。家も商店も彼らの通う学校もあるのですが、どこにも彼ら8人しかいません。

どうやら主人公はバラバラになっていた放送部員達をまとめようと夏休みの合宿に向かったらしいのですが、そこでも失敗し後味が悪いまま町に戻ってきたら誰もいなくなっていたとの事です。

わずかな時間で消えてしまった人類と、延々と繰り返される1週間。プレイヤーは主人公と共にこの謎を解明する事になります。

学校という名の隔離施設

この作品の舞台設定を話すのを忘れていました。この物語の舞台は日本なのですが、何故かある日から先天的・後天的に精神に問題を持っている子供達が続出するようになって、それが社会問題となり、政府が政策を打ち出したのです。

その政策が「適応係数」というもので、その人間が一般社会に適応出来るか、他人を傷付けたり害をなしたりしないかをテストで計測して、引っ掛かった者は精神科医とカウンセラー、警備員が常駐する隔離施設に送られ、そこでもダメな場合はもっと違う施設へ送られるのです。

それで、主人公達が通う学校も、その隔離施設です。一見は普通の学校ですし、外出する事も出来ますし、皆自宅から学校まで自分の足で通っているのでそんな感じはしないと思いますが、社会に適応出来なかった危険人物として弾かれています。

社会に弾かれた少年少女

簡単にご紹介させて頂きます。まず主人公は適応係数84%の学校内で一番重篤です。普段はセクハラしまくりの軽くて明るい少年なのですが、彼はとある理由により一定の条件を満たしてしまうと一気に豹変してしまいます(どう変わってしまうのかは実際に見て下さい)

他の登場人物も1人を除いて大体20~40%くらいで、全員が全員心に問題を抱えていまして、話が進むにつれてどんな問題を抱えているのかが分かるようになります。

また、この適応係数は社会的にも暗黙の了解となっているのですが、やはり差別は付きまとってきます。適応係数が高いと異常者として判断されてしまうのは、仕方ないのかもしれませんね。

「生きている人、いますか?」

これは主人公がラジオ放送で言うセリフの一部です。この世界がループし続けていて、そこから脱出する方法を様々なヒントから見つけ出した主人公が、すべてを終わらせた後に完成したラジオ放送用のアンテナを使って放送を始めます。

ここに辿り着くまでに、主人公もプレイヤーも頑張りました。長いし、主人公や他の登場人物達が抱え込んでいる心の闇、その理由を容赦なく叩き付けてくるので、結構すごいです。

この学校に通うようになった理由、主人公がああなってしまった理由、主人公ととあるヒロインの仲がやたらと悪い理由、この世界に彼ら8人以外誰もいない理由、そして、誰もいないはずの世界で見つかった老人らしき人物の死体

すべての謎が解けます。終わった後に考えたくなりますし、理解しきれなかった箇所も出て来るとは思いますが、それも色々と考えていくととてもよく出来た作品だと言うのが分かりますよ。

最後の主人公が流すラジオの主人公のセリフはもう感動しました。鳥肌が立ちましたし、切なかったですね、これで幸せなのかな、と。

彼が自分で選んだ道ですし、私にはどこか満足そうにも見えたので、これはとても切ないハッピーエンドだと思う事にしました(もちろんその後のイベントも好きです)

最後に、狂気を孕んでいても、壊れてしまっていても、社会から弾かれていても、彼は人間です。彼も、他の登場人物達も、あなたと同じように悩みを抱えています。

とりあえず最後までプレイしてみて下さい、シナリオの出来が良すぎて鳥肌が立ちますよ。途中の暗く重たいルートも、最後のすべてが終わった時の彼も、考えてすべてを理解した時のあなたも、すごいと思います。