こちらはインターネット上の掲示板を使って、誰でも書き込みが出来るインターネット小説を小説化、後に映画化した変わった作りの作品になります。

評価はかなり割れていて、時間のムダだったという方から、強い影響を受けた方までいまして、ここでご紹介しようかどうかとても悩みましたが、こういう作品もあるのだという事と、14歳という微妙な年頃の子供達が抱える闇について考えるものもあったので、ご紹介させて頂く事に決めました。

146分という長さもありますし、心理描写がとても多いので何が言いたかったのか分からなかった、と思う方もいるかもしれませんが、考えるのではなく、ただ感じてみて下さい。

14歳のリアル

14歳というのは、とても微妙な年頃です。ひどく感傷的で、脆く傷付きやすく、倫理や道徳を分かってはいても「自分」というものを上手く確立出来ないまま、同じく揺れ動いている彼らと共に集団行動を行わなければなりません。

今現在でもイジメや自殺は多いですよね。特に中高生の場合が多く、彼らは「自分の居場所」を探し、何かしらの閉塞感を感じて必死に生きて、上手く「自分」と「自分の居場所」を見つけられなかった人は最終手段として自らの死を選びます。

この映画は、それを赤裸々に、けれど幻想的に美しく描いております。14歳前後の子供達が感じる葛藤を、演技、映像、文字、音楽、全てを使って表現しているので、見ている側にとってはある種の拷問と感じるかもしれませんね。

イジメ、売春、万引き、レイプ、子供達の叫び

主人公と前は仲の良かった男子生徒が、夏休みに主人公と友達と共に行った沖縄旅行から帰って来た新学期からいきなり荒れてしまい(お金持ちだった家が倒産して一家離散してしまったらしい)、その日から主人公はその元親友とその取り巻きによるイジメの対象者になってしまいます。

廃車置場のような場所でフルボッコにされたり、自慰行為や万引きを強制されたりして、彼の好きなアーティストのCDも叩き割られて、彼の心は癒しを求めてそのアーティスト(リリィ・シュシュという架空の歌手)の歌に逃げ込むようになりました。

元々リリィ・シュシュを教えてくれたのは、仲の良かった頃の元親友だったのですが、毎日のイジメで日々募る想いと逃げ場のない閉塞感から彼にとってはリリィ・シュシュがすべてになります(「リリィだけがリアル」というセリフがあります)

また、そのイジメっ子は女子生徒の弱みを握ると売春を斡旋してその金を奪うようにもなり、主人公は女子生徒からお金を回収してイジメっ子に渡すという役割もやらせられるようになりました。

彼の心の叫びは、自身が立ち上げたリリィ・シュシュのファンサイトで、他のファンとの交流用のチャットで描かれます(チャット?掲示板?の文章が画面に映し出されるので、しっかり見て下さい)

たとえば、「死のうと思いました。何度も何度も。でも死にきれなかった。堕ちる!堕ちる!堕ちる!永遠のループを。落下し続ける。誰か!僕を助けてくれ!誰か!ここから助け出してくれ!」みたいな感じです、他にも色々ありますが、かなり苦しんでいるのが分かりますね。

主人公だけではなく、売春をさせられている女子生徒、イジメっ子に逆らえない少年達、ファンサイトに来る他のリリィファン達、そしてイジメっ子本人の苦しみと叫びと嘆きが、チャットだか掲示板の文章によって表現されます。

ネットとリアルの交差

ネット上では心の叫びを赤裸々に暴露し、そこでお互いに痛みを分かち合える友達を主人公は見つけて、他のファン達と共にリリィについて語り、心を解放しています。

しかし同時期にリアルでは相変わらずイジメを受け、売春の手伝いをさせられ、好きな女の子をイジメっ子達にレイプされてしまいます。

リリィだけをリアルだと認識し、苦痛でしかない現実を生きながらネットに逃げ込み、よりリリィに依存してしまうという悪循環を彼は生きます、リリィと、自分が作ったファンサイトで知り合った人との交流だけを心の支えにして。

彼を閉じ込めて苦しめている閉塞感から、彼を救い出すのはネット上だけの関係であるその友人とリリィだけ……深く描かれていませんが、他のリリィファン達も何かしらの苦しみを感じてサイトに来ていたのでしょう、そこでなら吐き出せないものを吐き出して共有出来るのだから。

そんな感じで物語は進みます。ここまでは時折画面上に打ち込まれる文章を見て、彼らの叫びを感じてみて下さい、独自の単語があるので分からないかもしれませんけど。

そしてネットとリアルが重なり合う

ファンサイトで、リリィのライブの時にオフ会をしないか?という話が出て物語は終焉へと向かいます。主人公はあの仲良くなれた人物と会える事を楽しみにライブ会場前へと向かうのですが、かなり人が居てどこにファンサイトの人がいるか分かりません。

そして人混みの中、目印である青林檎を持った人物を見つけるのですが……この先はご自身で確認して下さい、彼の感じた絶望と、その後の声に出せた叫びは、やるせないとしか言えませんね。

会わなかった方が良かったのか、いえ、それでも彼は救われなかったと思いますよ、現実が変わらないのであれば彼の苦しみは消える事はないでしょう。

ならばどうすれば良かったのか。14歳というまだ幼い少年に出来る事などたかがしれているでしょうね、誰かの歯車が歪んでしまった時に、彼の歯車も歪んでしまったのでしょう。

これは、イジメを描いた作品ではない

イジメの描写がかなり続きますが、これは決してイジメだけを描いた作品ではありません。14歳という微妙な年頃の子供達が抱える闇、それに伴って行ってしまう葛藤を描いたものだと思います。

先程も書きましたが、イジメっ子の方も苦しんでいたのが、最後まで行くと分かります。彼は彼なりに苦しみ、悩み、そして救いを求めていた……それを表に出せなかっただけなのです。

幼すぎる子供と違い、道徳や倫理を知っている彼らはちょっとした弾みで道を踏み違えてしまい、それがいけない事だとも思っているから、苦しんでしまう。

それぞれが抱え込んでしまっているものが表に出れば、互いにどうにか出来たのかもしれませんけど、それが出来ないのが彼らなのでしょう、多分。

全員が全員とは言えませんが、14歳前後の頃に葛藤を感じて、悩み苦しみ、閉塞感に至る人は多いと思います。

ご自身の14歳前後の頃を思い出してみて下さい、あの頃、あなたは何を感じて何を思ってどんな風に生きていましたか?その時に何かを感じていたのなら、この作品に共感出来るかもしれませんね。

最後に、公式サイトでは未だに掲示板が公開されており、自由に書き込みが出来ます。商業系の宣伝を書いているものもありますけど、リリィ関係の書き込みもされていますので、見終わった後、是非見に行ってみて下さい。