「鬱になる映画」や「後味の悪い映画」などで検索すると必ずと言っていいほど出て来るのが「ダンサー・イン・ザ・ダーク」です。

他の記事でご紹介した「ドッグヴィル」もなかなかの有名作で物凄く胸糞悪いのですが、こちらの映画はそれを余裕で越えます、最高に胸糞悪い作品です。

また、この映画を見て精神的にやられてしまった方がかなりいらっしゃるようですので、閲覧する際には本当に気を付けて下さいね、何回も見ると鬱になりすぎて自殺してしまいそうな作品です。

あまりにも不幸すぎる女性

主人公である女性は幼い息子と2人暮らしで、貧しいながらも友人と楽しく幸せそうに生きてきましたが、彼女は先天性の病でもうすぐ失明してしまう運命にあります。

また、そんな彼女の遺伝子を継いだ息子も、13歳までに目の手術を受けないと完全に失明してしまうので、彼女は子供の手術費(かなり高額)を稼ごうと毎日大変な工場の労働をしています。

これだけでもかなり不幸なのですが、そんな彼女の楽しみがステージに立ってミュージカルに出る事で、小さなグループ?に入り楽しそうにしていますし、時折何か苦しい事やツライ事があると空想の世界で楽しそうに歌って踊っていたりしていました。

お金は順調に貯まっていき、彼女は失明してしまうけれど彼女の愛する息子は失明の危機を逃れ、貧しくも幸せな日々が続くんだろうなぁ、と思っていた矢先、彼女の運命は絶望へと転がり堕ちていくのです。

職場を解雇される

彼女はほとんど目が見えていないのを誤魔化して働いていたのですが、ある日ミスをしてしまい、とうとうそれがバレてしまいました。

金属加工のような工場で働いていたので、見えないのはかなりの致命的になってしまいます。そもそも見えないとほとんどの職にはつけないでしょう、特に彼女はヨーロッパからアメリカへの移民で、家も親切な人の敷地を借りてトレーラーで生活しているのですから、働き先なんてなかなか見つかりません。

だからこそ彼女はずっと見えているフリをし続けて誤魔化していたのですが、ある日ちょっとした(工場からしてみればちょっとしたではないかもしれませんが)ミスをしてしまった事でそれがバレてしまったのです。

当然彼女は解雇されてしまうのですが、息子の手術費はどうにか貯まっていたので良かったです。が、そんな彼女に更なる不幸が訪れてしまいます。

信じていた人の裏切り

仕事を解雇されても息子の手術費は何とか貯められた彼女。ところがある日そのお金がなくなっている事に気が付きました。

彼女が使った訳でも、別の場所に置いた訳でも、息子が何かした訳でも、もちろんありません。ではあの大金は一体どうしたのか?と言いますと、盗まれてしまいました。

しかも彼女の大切なお金を盗み出したのは、彼女が信頼を寄せていた人だったので、彼女の悲しみと驚愕は想像を超えてしまう事でしょう。

彼女は目が見えていないので、静かにしていれば彼女がいても気付かれずにトレーラーの中にあるお金を持ち出し盗む事が出来るのでして、彼女がそれに気付いた時にはもう取り返しがつかない状態になってしまって……。

何とかお金を取り戻せても貧乏で信用のあまりない彼女は、盗まれたお金を取り戻したのではなく、その信じていた人のお金を彼女が盗んだという事にされてしまいます

ここで何があったのか言えば良かったのですが、優しい彼女は「お金を盗んだ事は言わないでほしい」と頼まれ、友人だからと彼女は口を閉ざしてしまい、その結果……これ以上はネタバレになってしまいますのでここで止めておきますね、お金を取り戻す時の事も省かせて頂きました。

現実なんてこんなもの

この映画は時々彼女の空想の世界がいきなり始まって、いきなり現実に戻りますが、その空想と現実のギャップがすごくて現実に戻った時に「所詮現実ってこんなもんだよね」と思ってしまいます。

空想の世界では彼女はとても幸せそうに、楽しそうに、たくさんの人々に囲まれて、裏切った人からも笑顔で接してくれてそのダンスと歌声がすごいのですが、現実に戻った途端彼女はツラく悲しく、どうしようもない状態にあります。

幸せに満ち溢れている空想世界と、転がり落ち続けていく現実世界。視聴者はそれを何度も行ったり来たりしながら人生の重みを体感させられます。

現実は思い描いたように楽しく幸せになんてなってくれない、神様なんて何処にもいない、現実なんてこんなものなんだと思い知らされてしまいました。

不幸に転がり落ちていった彼女が辿り着くエンディングは、やるせないですね。本当に、どうしてこうなってしまったのか、彼女には救いの道がなかったのか、誰か彼女を助けてあげられなかったのか、そんな思いが溢れてきます。

美しくないのがこの世界

不幸は誰にだって訪れますし、綺麗ごとで済ませる事が出来るほど美しい世界ではありません。この世界は誰にでも優しく、誰にでも冷酷なのです。

自分の幸せの為に誰かを不幸せにする人間、自分が不幸せになりたくないから代わりに誰かを不幸せにする人間、誰かを不幸せにしたくないから自分を犠牲にする人間、そういう様々な人間がいるからこそ、この世界は誰にでも優しく、誰にでも冷酷。

私達はそんな世界に生きているんだと、ご都合主義や思い描いたような幸せに包まれている訳ではないのだと、現実の世界を視聴者に知らしめて来るのがこの映画です。

彼女の運命はあまりにも悲惨すぎました。不幸に不幸が重なり、それでもせめて愛する息子だけは幸せになって欲しいとすべてをかけた彼女の結末は、あなたの目にはどう映るのでしょうか?

最初に言いましたが、この映画で精神面をやられてしまった方が結構いらっしゃるので、何回も見る映画ではありませんし、見る際の精神状態には本当に気を付けて下さいね。

素晴らしい作品だとは思いますが、私はもう二度と見たいとは思えない何とも微妙な気分にさせる映画でした。